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手紙

前略

梅雨空の日々が続いていますが、皆様にはお変わりなくお過ごしのことと思います。

大震災・原発暴発のあの日から四ヶ月、私ども夫婦と飼い猫ロックも、避難先の横浜の団地の一隅で、ようやく落ち着きを取り戻しつつあります。

テレビを見てはめそめそ、眉間に縦ジワ、些細なことにいらいらを繰り返していた私は、パソコンに触れたり、新聞や買いあさった本に読みふけったり、28日には「一時帰宅」をして、広辞苑や缶ピースを持ち帰ったりしています。

妻は5月に生まれた孫娘の世話で長女宅に足しげく通い、福島の桃のような赤ん坊のほっぺに元気をもらっています。

ロックは、畑を駆け回り、木に登り、鳥や蛙や虫を取り放題だった田舎の生活を想い出すのか、団地の部屋のカーテン越しに外を眺めています。

原発の成り行きは、見通しの立たない泥沼に陥っているようです。

故郷を追われ全国に散らばった被害者の祈るような視線をよそに、目を覆いたくなるような政争に狂奔する政治屋たち、この期に及んでも責任逃れこそが仕事と思い定めているかのような行政。懐勘定にうごめく商売人たち。「3月11日以降のことは無しにしていただきたい」と平然と泣き言をいう原発のお目付け役。過去を悔いることもなく、もっともらしい言葉をまき散らす「言論人」・・・。この国の醜い姿が、惨状をさらす原子炉建屋と二重写しになります。

目に見えない放射能に汚された私たちの畑、田圃、川、海、水、空気・・・。もっともっと永らえる筈だった人生を断ち切られたお年寄りや病人。人並みに弔うことすらかなわぬまま、じっと悲しみに耐え、故郷に帰れる日を待っている多くの方々のことを思うと、立ちすくんでしまいます。

繰り言ばかりを並べましたが、今回の経験の中で、皆様からお寄せいただいた身に余るご支援と激励は、私どもにとってかけがえのない財産となりました。これを元手に、残り少ない時間の中でできることを考えていこうと思い始めています。改めて御礼申し上げます。

酷暑に向かう折、お体にはくれぐれも留意なされますよう。

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南相馬から避難されてくる途中、我が家に一泊されたご夫妻から、お手紙をいただきました。福島の生の声を少しでもたくさんのひとに聞いてほしくて、お名前部分だけ省略して掲載させていただきました。彼らの痛みを理解する努力せずして、原発の是非を語るわけにはいかないと思うんだけどな。

投稿者 sunameri : 2011年07月08日 20:57

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